「室内灯の装置を見えなくできないか」
Nゲージにおける室内灯の存在を知って以来ずっと向き合い続けてきた課題です。室内灯を装着し、光るのはいいんですが室内灯の装置が外から丸見えなのはどうなのかなぁ…という思いが拭えずずっとモヤモヤしていました。
導電性テープという、糊の面にも電気が流れるテープの存在を知って新しい室内灯を考えたのでまとめておきます。
これはKATO車ですが、ご覧の通り車端部の台座を削り取っても大丈夫です。もちろんTOMIXのような大きなバネもありません。
目次
つくりかた
KATO車に装着する前提で解説します。長く鉄道模型で遊んできたのですが、今回なんとTOMIXブランドのマトモに遊べる在来線電車・気動車・客車は一両も持っていなかったことが判明しました。決してアンチTOMIXでも何でもないのですが……
まず、屋根を外して遮光用の?片持ちの板を取り外します。室内灯のLEDの設置位置を上げて外から見えにくくするためです。
なお、車両中央で左右を繋いでいる部分は切り取らないほうがよいです。これを取ってしまうと車体の強度がガタ落ちします。ただし、屋根を接着するなら話は別です。
次に、銅箔テープ(導電性テープ)を細切りにして、
そこにチップLEDをハンダ付けします。先に銅箔のほうにハンダを付けておくと楽です。
車体の左右を繋ぐ部分を超えるように導線でジャンプさせて連結します。
車体側には、写真のようにブリッジダイオードとCRDと4枚のテープを組み合わせたものを設置します。床板の集電板から妻面に貼ったテープを通して集電し、それを整流して屋根に持っていくスタイルです。
LED付きのテープを屋根の裏側に貼り込み、制御装置のテープを妻板と屋根に貼ります。LEDと制御装置の間の接続は糊の導電性に頼ります。距離を長く取ったほうがいいでしょう。
床板には集電板を差し込みます。燐青銅板から切り出してもいいですが、KATOの床板の集電板を切って使うとラクです。前後方向に押し付けることで床板と車体の導通をとる方式なので、集電板を長く作って行くところまで挿してドン突きさせるか、写真のように集電板を曲げて引っかかるようにおきましょう。端は曲げて板バネっぽくしておきます。大きく曲げすぎると窓から見えてしまうので注意。
ちなみに、ブリッジダイオードにCRDを直接付けるとCRDの真下にLEDが来てしまい車端部が暗くなります。面倒でも導線を間に入れることで場所をずらしたほうがよいでしょう。
各部の導通が取れていれば、お好みの明るさでムラなく光る室内灯の出来あがり。上の写真は設置してから2か月ほど経ったものですが、全く問題なく点灯しています。耐久性にも問題はなさそうです。
材料
人によってお買い物事情は異なると思いますが、首都圏に住んでいる自分が利用したパーツや材料を書いておきます。
LEDとCRD
ごく一般的な電子部品です。お好みのサイズや色のチップLEDとお好みのCRD(定電流ダイオード)を使ってください。1両あたりのLEDの数が多ければ多いほどムラなく光ってくれますが、多すぎると製作が大変になります。
ブリッジダイオード
なるべくサイズの小さい物を選びましょう。大きいと肝心の車端部にLEDを配置できず、せっかく工夫の成果が小さくなります。
導電性テープ
本来は電磁波シールド(?)などに使うアイテムらしく、電気回路の一部として使うのは目的外使用になるようです。この上に直接ハンダ付けするので銅製の物を買いましょう。アルミ製の導電性テープもあるようですが、アルミにハンダ付けするのはかなり困難です。
秋葉原で購入するならこちらがおすすめ。
Dexerials製です。幅13mm、長さ25mで、オヤイデ電気で3100円+税でした。
糊の色は黒。カーボンを使用しているとかなんとか。
ちなみに、導電性テープといえばこちらもあります。
しかし、こちらのテープは粘着力が強くないようで、車両に設置してしばらくすると剥がれてきてしまいます。室内灯に使うならば上述のテープのほうがよさそうです。
さて。これを量産し、編成モノに組み込んで運転会で試走させてきました。
いわゆる「激光」状態にしなくても車端部まで均一に光ります。いいですね。
実は今回使用したCRDは5.6mAと、流量の少ないものを使用してあえて光量を落としています。というのも、
と思ったからです。一般的な室内灯で光量を落とすとムラが目立ってしまうのですが、LEDを多数配置しているタイプの室内灯なら心配ありません。
室内のバネや塊が気になって室内表現のモチベーションが低下していたのですが、この室内灯ができて再びやる気が出てきました。
今後の課題
- このままの構造だと両運転台車には付けられません。側面に力をかける方式だと車体が膨らむし上下だとスカートと車体に隙間ができかねないしさぁどうするかな。
- 前後に力をかけて床板と車体の導通をとる方式なので、妻板を交換した車両に使うには不安があります。問題の本質は上と同じです。
コンデンサーの設置
ここまでで製作した室内灯にはコンデンサーが付いていません。どうにかならないかと思ったのですが、どれほど車両のクリーニングを徹底してもレンタルレイアウトに行くとチラつきます。
コンデンサーを入れたいのはやまやまなのですが、付ける意味がありそうなコンデンサーを入れようとするとどうしても外から見えてしまいます。ここまで室内灯の装置を見えないようにしようと苦心してきたのにコンデンサーが見えてしまっては本末転倒です。
で、何かいい画期的なコンデンサーはないかと検索をしてみたのですが、結論から言うとやはり電解コンデンサーしか残らないようです。
物理的なサイズが大きすぎるので電解コンデンサーは避けたかったのですが、秋月電子の部品一覧を見ると、耐圧と容量を鑑みるに使えそうなのはセラミックコンデンサーか電解コンデンサーかの二択でした。で、セラミックコンデンサーは直流の高電圧を掛けると容量が減少するとのことです。村田製作所のページにもそのような記述があります。
したがって、どこかに電解コンデンサーを入れるしかないということが分かりました。
しかし、どこに入れろって……
……?
クーラーの下に隠せば良さそうです。屋根板に穴を開け、
こんな感じでコンデンサーを仕込みました。使用したのは耐圧16V,100µFの物です。
これなら外から見えません。
で、試運転をしてきました。前から2両目と5両目にコンデンサーが装備されています(4両目がM車)。効果は一目瞭然ですね。容量も100μFあればチラつき防止の役目を果たせるようです。
ちなみに秋月電子には同じ外寸の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーとアルミ電解コンデンサーの2種類があり両方試してみたのですが、特に違いは感じられませんでした。鉄道模型程度の用途なら安いほうで構わないようです。
開発の過程
ここから先は余談です。
私が本格的にNゲージをいじりはじめたのは高校1年のときでした。友人のSが室内灯を自作するというアイデアを持ち込んできて、それで室内灯と室内表現の沼にはまったのが2年の頃だったように記憶しています。しかし、せっかく室内表現を頑張っても電気を持って行くための装置が目立っていて嫌だなぁ……とずっと思っていました。
で、作ったのがコレ。
チップLEDを銅線にハンダ付けし、それを両面テープで屋根に接着。
一番大きい部品がブリッジダイオードなので、それを屋根に貼りつけるというアイデアはこれを作ったときのものです。ブリッジが大きいですが、この頃はまだこれより小さなブリッジが秋葉原では売っていませんでした。
しかも、これだと自分が本当にやりたいことが出来ていませんでした。結局バネが見えているんですね(笑)
そのバネもこんなの。天井側の装置とうまく接触せず、点灯は不安定でした。
ここまでやって私の鉄道模型ライフは一年ほどの休止を余儀なくされました。まぁ色々あったんですよ()
で、その後イズムワークスの製品を見て導電性テープなる物があることを知りました。これは使えるぞと思い試行錯誤の末この室内灯に至ったわけです。
元々はこんな感じで、車体側にテープを貼ってその上にテープをハンダ付けしたLEDを貼る予定でした。しかし接着面積が狭いとうまく電流が流れないようで、全てのLEDを安定して点灯させるのは無理でした。
ということで、テープの導電性に頼るのは2カ所だけにする仕様になりました。
今後もこの室内灯の開発を進めていく予定です。
更新履歴
2018/11/02 投稿