日ノ出前検車区

趣味は朝活で。最近は備忘録と化しています

室内表現に影響しないNゲージの動力ユニットを作ってみる

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以前、NゲージだってM車の室内表現を諦めたくない、ということで小型モーターを台車に架装してみた……のですが実用的な物になりませんでした。

そこで、アプローチを変えて再挑戦してみました。


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モーターを大きくして、気動車みたいな構造にすればいけるかも?ということです。

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Fusion360で入力軸と車軸の位置関係を拘束するギアボックス、歯車の厚さを考慮して車軸パーツ、そして台車を作りDMMに発注しました。

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届いた物を組み立てました。今回は技術試験なので台車のディテールが何もありませんが、将来的にはディテールを付ける予定なので台車側面を上に向けて出し、M1のビスで組み立てる方式をとりました。3D出力品は弾性が期待できないので台車パーツを曲げて車輪を入れることができない、という面もあります。なお、このままだとビスが長すぎるのでこの後切断→ヤスリがけして短くします(本職の機械屋に殴られそうな加工)。本当はM1×2のネジとかがあればいいんですけどね。ナニワネジ?あれは高すぎてちょっと……これより小さい物を求めると寸法が指定されていない「メガネ用ねじ」を買うしかないのが実情でして……




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で、とりあえず余っていたKATOのT床板に取り付けました。モーターはZショーティーの動力ユニットに入っていた物からウォームギアを外して使用しています。分解した話はこちら。耐圧6Vぐらいはあってそこそこパワーがあり、なおかつ小型のモーターってあんまりないんですよね。耐圧が3Vで良ければよりどりみどりなんですがねぇ


で、動かしてみたところ、重大な問題が浮き彫りになりました。

ギアボックスが自重で垂れ下がり、動かすとバタつくんですね。 考えてみれば当たり前なのですが設計時には思い至りませんでした。


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というわけで台車枠と角材で接着し、台車との位置関係を拘束しました。



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真横から見るとこうなります。ウォームギアを用いた通常の走行装置はどうしてもギアかモーターが上に飛び出して室内表現を犠牲にしてしまいますが、これなら完全に床板の下に収まります。


走りました。

ただ、モーターと車輪の間には歯車が1対しか入っておらず、ほぼ減速されていません。おまけにZショーティー用動力のモーターはそもそもスローが効くものではないため、適正速度の時の電圧がとても低く、さらにはコンセントの電圧変動に敏感に反応してしまいます。実用には問題がありそうです。


ただ、前回作一番の問題点は克服されました。今回のモーターのトルクは十分すぎるほどあります。車両性能のネックは車輪とレールの摩擦が足りないことに移りました。


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これは動軸の車輪を両側ともゴム付きの物に変えることで一応解決しました。



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ただ、1軸駆動だと登坂能力はどうしても稼げません。全M、つまり1両につき1つはモーターを付けねばならなさそうです。




さて。登坂は一旦置いておいて、どのように減速しようか……と考えて調べていたら使えそうな物を発見しました。
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φ6mmの遊星歯車が付いたモーターです。


で、これの軸にKATOのドライブシャフトの受けを付けました。穴を拡大して差し込んでいます。


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モーターを交換し、




今は亡き秋葉原のFMODELSの上の"8BANSEN"で走らせてみました。低電圧域で微調整をしなくてもそこそこ適正な速度で走ってくれます。


横から見るとこんな感じ。電車なら床下機器か何かで隠すべき部分でしょうが、気動車ならあえて見せていくのもアリかも??




ここまでやって構想が上手くいくことはハッキリしたので、さらに改良をします。



ちょっと寄り道ですが、新しい集電機構を考えたので実装してみました。

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床板側にはピンソケットを設置しておき、台車集電板とピンヘッダをリード線で繋ぎます。こうすることで、台車集電板を隠すと同時に集電を確実にしてやろうという考えです。画像ではφ0.2線を用いていますが、硬くて台車の回転に支障が出てしまいました。後でφ0.12やφ0.14を試したらうまくいったのでそちらのほうが良いでしょう。



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さて。今度はギアボックスと台車を一体にして出します。結果として、一つの台車の片方の軸がインサイドフレーム、もう片方が普通のピボット支持という大変に奇抜な物が出来上がりました。


今回は試しに実物のボルスタレス台車同様、zの力は空気バネ、xyの力は中心ピンで受けるような構造にしてみました。
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一般的なNゲージボルスタレス台車の場合、集電板にもz方向の力を持たせてやらないと集電不良を起こすため、どうしても空気バネと車体の間に隙間ができます。見た目がよろしくないので何とかしたいと常々思っておりました。先述の集電機構を使えば実感的なボルスタレス台車が実現できるわけです( ^^)

ただ、分かってはいたのですがこれをやるとカントの入り口で車輪が浮いてしまい集電不良を起こします。本格採用するならばこの問題をどうにかせねばなりませんね。



床板も作ります。スチールシートにプラ角材や銅箔テープを貼って作った極薄の床板です。

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車体と床板の固定ですが、側面ガラスに座席を模した部品を貼り付け、中に磁石を仕込んでおきます。ツメではなく磁力で持っておこうという発想です。


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こうすることで、たとえM車でも車内はこんな感じにできる予定です。目指すは足を切らずともご乗車になれるNゲージです( ˘ω˘ )


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モーターを取り付けるとこんな感じ。これで自走します。床の上には一切飛び出していません。
なお、今回使ったモーターは起動電圧が一般的な鉄道模型用のモーターよりも低く、灯火類との相性が問題となってきます。少しでも起動電圧を上げる&電圧変動への応答を鈍くするべくモーターは直列繋ぎにしておきました。直流モーターを直列繋ぎにするとトルクが低下するので通常はやらないのですが、この機構の性能の律速はトルクではないのでこうしてみた次第です。

なお、台車からの集電に用いているピンヘッダ&ソケットは一般的な2.54mmピッチのものではなく、ハーフピッチと呼ばれたりする1.27mmピッチのものです。
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秋月にはピン数の多いものしかなく、切断して使っていたのですが特にソケットの切断が力仕事で大変でした。代わりに樹脂のガワを3Dで出して、金具を移植して使うことにしました。



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軌間9mmが上手くいったので、今度は軌間6.5mmの通称「Njゲージ」版を作ってみました。ちなみに、サクッと書いていますがこの台車の組み立ては大変にしんどいです。私の精神力だと1日に2基が限界です……


走行の様子です。問題なく走ってくれています。



技術的な基礎の部分は完成したので、あとはこれをどう使うかですね。知り合いにこれを見て頂いたところ、クモルや京急のデト、京成のモニ、高松琴平のデカ、西武のLaview、各社のトロッコ気動車やロンキヤなどの特殊車両に使えるのでは!?と言って頂けました。

ゆっくり楽しんでいきたいと思います。




2020/05/21追記


腕時計を分解して手に入れた歯車を苦労して取り付けていたわけですが、実はベベルギアごと3Dプリントしてしまえることが発覚しました。Nゲージに使える極小サイズのものを出しても動いたのです。



この動力ユニットの致命的な欠点は集電軸が1本しかないことです。動軸をガッツリ固定したので車軸の先端が集電板に触れないんですね。
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ある日、気動車の台車の図面を見ていたら別な案が思い浮かびました。

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国鉄製の図面なので大っぴらに公開していい(はず)のです
車軸に付いているのは、エンジンからの入力を車軸に伝える「終端減速機」と呼ばれる装置です。ご覧の通りこれの自重は車軸に掛かっています。

これじゃね??と思い、こちらの設計を改めました。
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はい。動軸と歯車のケースに車軸まわりでない自由度を与えました。支点のところはあえてガバガバにしています。2つの部品を組み立てるのではなく、組み立った状態のモデルにランナーを付けて出力し、ランナーを切り落とすことで可動部を持つ部品が作れるというわけです。

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以上を組み合わせた改良版を制作中です。ご期待くださいませ。




2020/06/16追記
上の部品を発注しました。結果、設計は上手くいっていました。
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集電軸を4本に増やすことに成功しました。また、歯車を3Dに置き換えたことで組み立てがかなり楽になっています。かつては丸1日使って1両分組み立てるのが限界だったのですが、今ならもっと速く組むことができます。かつては8両や10両などの長編成ものに適用するのは無理だと考えていたのですが、これなら6.5mmのNj用と9mmのN用で合わせて10個以上組むのも可能そうです。

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こうなります。

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これがやりたいことです。ほぼ実物通りな室内表現です。このHK100の制作記?はこちら。



さらに、一工夫してこんなものを作ってみました。

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鉄コレ台車をそのまま動力化できるパーツです。KATOの集電板を仕込んで結線し、車輪を取り付けた3Dパーツを組み込めば走ります。画像は西鉄3000のものです。上手くいったのでこの方式でN化しようと思います。
GMの台車もこれで動力化できそうです。ただ、集電板を仕込んでみると実車の軸間が2100mmでも14mmから微妙に外れていたりすることが多いのが悩みどころなんですけどね(笑)

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