
実車は1895(明治28)年に神戸工場で製造された有蓋緩急車とのことです。
明治~大正期の車両は現代の鉄道車両と比べかなり細身だったため、Nゲージ規格のキット化にあたり横幅をデフォルメしているとのことでした。ならば、「Njゲージ」規格でファインスケールの古典貨車を作ってやりたい!と思い挑戦してみることにしました。IORIさんならびにY氏、2024年のJAMにてご助言頂きありがとうございます<(_ _)>
■目次
†先行研究†の調査
IORI工房の公式サイトに公式サンプルの写真が掲載されています。ありがたいものです。
実車の車体寸法の確認
ファインスケール化の検討にあたり、まずは実車資料を確認します。
図面が新ぜかまし文庫様の、形式図 > 貨車(大3) > 178有蓋緩急車 にありました!アップありがとうございます!
どうやら形式
実車の図面上の寸法を確認すると、
| ワフ2714 | 図面上 | m換算 | 1/150 |
|---|---|---|---|
| 車体幅 | 6ft6in | 1.98m | 13.2mm |
| 車体長 | 15ft2in | 4.62m | 30.8mm |
| 妻板高さ(台枠天面〜天井裏) | 6ft3¹/₄in | 1.91m | 12.7mm |
| ワフ2715〜2718 | 図面上 | m換算 | 1/150 |
|---|---|---|---|
| 車体幅 | 6ft6in | 1.98m | 13.2mm |
| 車体長 | 15ft6in | 4.72m | 31.5mm |
| 妻板高さ(台枠天面〜天井裏) | 6ft3in | 1.91m | 12.7mm |
仮組みしたキットの寸法を測定してみると、
| IORI工房キット | 寸法 | ワフ2715~18との差 |
|---|---|---|
| 車体幅 | 14.7mm程度 | +11% |
| 車体長 | 32.6mm程度 | +5% |
| 妻板高さ(台枠天面〜天井裏) | 12.2mm程度 | +4% |
というわけで、確かに横幅はデフォルメしてありますね。IORI工房キットの元ネタは車体長がやや長めなワフ2715~18だと考えるのが良さそうです。
今回は横幅をいじってファインスケールに近づけるようにして組んでみます。長さと高さの+5%程度については、自分の模型作りの腕前(笑)でブレそうなのであまり細かいところまで追い込まないことにします。
もっとも、5%デカい1/150模型は約1/143になってしまうんですよね……Nサイズの模型は小さくて難しいですねぇ。
なお、ホビーサーチの【実車について】の欄には「車体長13ft6incの~」とありますが、これは誤植か何かでしょう。検索性の高いページで間違えないでくれ~~!
車体を組み立てる
工程の写真を撮っていなかったのでいきなりL字まで組んでしまいました(笑)

幅の目標寸法は、全体の寸法とのバランスを取るべく1/150ファインスケール+5%の14.1mmとしました。妻板の幅を0.6mm、つまり両側から0.3mm程度ずつ切り落としています。ただでさえ超小さいのにもっと小さくするの???とか考えてしまって不安になりましたね……
ちなみにバッファの間隔は約9mm弱でモデル化されています。実物は間隔4ft ≒ 1219mmで、1/150すると8.1mmとなります。ここもN化するにあたり全体のバランスを見てデフォルメしているのでしょう。

手直しすることも一瞬考えたのですが、自分の技量では却って汚くなりそうなのでやめておきました。
側板はアレンジせず説明書の指示通りに組んでいます。しかし、それにしても小さいですねぇ。
床板・台車の改造
元々の設計では、台車のパーツは床板の側面に貼り付ける構成になっています。車体幅をいっぱいに使い、車体の横幅を広げるデフォルメを最小限に抑える工夫がなされているのがよく分かります。
今回はNj化するので、まずは台車表現の部分を切り落として別で組み立てます。

紙製の軸受は耐久性や走行抵抗に難がありそうだと考えたので、アルモデルのA3062『極小ピボット軸受』を入れました。
で、これを床板の内側に寄せて固定します。車輪はKATOのスポーク車輪を改軌して履かせます。車軸の飛び出し長さは特に変えていません。

Njゲージ化しても台車枠が内側に寄ってる感が全然出ないですね……車体幅の細さが際立ちます。こう見るとNゲージ規格に合わせるために車体をデフォルメせざるを得なかった事情もよく分かるというものです。
床板に台枠の表現を貼り付けます。改軌した車輪と干渉したので若干削っています。

この特徴的な斜め方向の梁はバッファの力を受けるための構造で、実物が貨物鉄道博物館で保存されている関西鉄道製の鉄製有蓋車に残されているようです。
https://readyfor.jp/projects/freightrailwaymuseum/announcements/255225
床板と車体を組み合わせる
全体の寸法確認のため、ここで一旦仮組みします。
実車のバッファ高さは2ft10in ≒ 863mmだったそうで、1/150すると約5.75mmです。車高が正しいか、ここで念の為に測定しておきます。

……バッチリ!!天地方向は特にアレンジしていないので、ここはキットそのままです。正確なキットですねぇ。
連結器
今回は1925(大正14)年の連結器一斉交換後の姿で作るので自動連結器を付けていきます。実車は1895年製らしいのでこの時点で車齢30年ですね……当時の鉄道車両ってどの程度まで使っていたんでしょうか?
Njゲージ仕様に改軌してしまったので、キット付属のカプラーポケットが取り付きません。カプラーの装着は別な方法を考えました。
色々考えた末にアーノルトカプラーのポケットに入れるタイプのTNカプラーを使うことにしました。TOMIXの0391を削って自連っぽくしたものに穴を開け、針金を刺してそれを床板に開けた穴に通しました。……が、このままでは連結器が垂れ下がってしまうので、

胴受にあたる部品を細めの針金で製作しました!


これで解放時のプロポーションを守りつつ上と左右に首振りできます。復心装置は無いですがまぁいいでしょう。
ちなみに敢えてTOMIXの自連ではなく密自連を使った理由ですが、単純に自連タイプはデカすぎて格好が悪いからです。どうしてこうなった……?

ボディを載せたら連結器が車体と干渉したので、実物同様に車体の妻板下部を切り取って避けました。
なお、実物の元バッファ装備車も自動連結器化にあたり連結器周りに金具が追加されています。当時の準備工事、これを全車にやったわけですから相当大変だっただろうな……とか思ってしまいますね。

床下ディテール
細かい部分を取り付けていきます。ブレーキ装置はキットの指示通りに組みました。

実車図面には『制動機種類…手用制動機』とあるので、これが車掌室のブレーキハンドルと繋がっているのでしょう。ところでワフ2716は眞空ブレーキ装備ってそれマジ?
ブレーキシューも付けます。しかしこれ、(瞬間接着剤を染み込ませるとはいえ)紙1枚なのでやらかしたら折りそうですね……予備が欲しいところかも。

キットの指示よりも奥まった位置に取り付け、ブレーキパッドの位置が車輪の踏面と揃うようにしておきました。
ディテール追加
妻面ステップ/手すり
手すりは手持ちのφ0.3洋白線で作りました。左右対称っぽく作るのにえらく苦労しました……

ステップについては実車についての知識が無いのでキットの指示通りに付属パーツを付けました。これは実車も今どきよくあるコの字形の手すりではなく板が突き出している形のステップだったのでしょうか?

連結器解放テコ
自動連結器を付けたので連結器の解放テコを追加する必要があります。

形状の詳細は不明なので、加悦鉄道ワブ3を参考にそれっぽく作りました。この子に救いの手があって本当に良かった……
テコ本体はφ0.2真鍮線、固定金具は汎用の手すり/パイピング用部品(トレジャータウンTTP215-51とTTP215-32)を使いました。
最後に屋根を接着します。屋根板も妻板同様に両端から0.3mmずつ切り落として幅を詰めてあります。

これで形は仕上がりました。いわゆる生地完というやつでしょうか。
なお、キット付属の3Dプリント製ブレーキハンドルカバーはおそらくDMMのアクリル素材なので、事前にリモネンに漬けてサポート材を除去した上で100円ショップの缶スプレーで塗装の下地を作ってあります。3Dプリント材は塗料が乗りにくい代わりに溶剤への耐性も高いので、塗膜が厚くて強い塗料で下地を作っておいた次第です。
塗装とデカール
形ができたので塗装に移ります。まず全体にメタルプライマーを吹いたうえでガイアノーツのNo.75「ニュートラルグレーⅤ」を塗りました。ただの黒で塗ると安っぽいだろうと思い、限りなく黒に近いグレーということで試してみましたがかなりいい感じです。
色合いの下調べにはこちらのサイトが大変役立ちました。ありがとうございます!
続いてデカールを貼っていきます。
キット付属のデカールには工部省マークと車番のほか、細かい検査標記類も収録されています。車番はワフ2714、ワフ2717の他にブカ178やカフ186等も収録されていました。1902(明治35)年の車種・形式の整理前後が両方とも再現できるようになっているのかな?という気はします。この時に標記をleft-to-right表記に切り替えていたのでしょうか。
デカールは貼り付けの例に描いてある以外にも何種類か入っている(様々な時代を再現できるようになっている?)のですが、現物は小さくてよく読めませんしキットの説明書にも説明が無く、筆者には知識が無いので雰囲気で適当に貼るしかありませんでした。せめて説明書か公式サイト等にフレーバーテキスト的な何かでも書いておいてほしかったですねぇ。

色々考えましたが、車番はワフ2717で社紋は敢えてのナシにしました。1895年製で自連化されているということは車齢30年オーバー確定ですし、官鉄は引退してどこかに譲渡されているだろうな……譲渡先で改番されず工部省マークだけ消してそのまま使ったということにするか……とか思った次第です。

☝こんな設定にはしましたが、台枠の「省道鉄」は敢えて貼りました。尤も、細かすぎてほとんど読めないので雰囲気程度ですね。何かが4文字書いてあるデカールがあると譲渡車っぽくする遊びの幅が広がって嬉しかったかも。
実在した車両を大真面目に作っていたはずなのに架空鉄道が始まりましたね(笑)こういうのも資料が乏しいことの醍醐味かもしれません。
デカールを貼り終えたらクリアーで保護します。Mr.カラーのNo.181の半光沢とNo.182のつや消しクリアーを混ぜて3/4ツヤ消しにしたものを吹きました。
最後に側面をマスキングし、屋根の濃緑色?を塗りました。

色合いはこれも加悦鉄道ワブ3を参考に、Mr.カラーの黒とNo.113 「RLM04イエロー」に微量の白を混ぜて調色しました。オリーブドラブは黒と黄色を混ぜて作った色である、という知識が役立つ日が来るとは思っていませんでしたね。
ところでこれ、何の色なんでしょうかね?ざっと調べた限りだとMackintoshの防水布(ゴム引きコート)あたりな気がする(イギリス国鉄への納入実績あり、発明時期的も時間軸の辻褄は合う)のですが、いかんせん実物を見たことが無いので何とも言えませんねぇ。屋根がゴム系の素材だとするとタイヤブラックとかラバーブラックの塗料で塗るとそれっぽい説……?保存車の屋根は何を使っているのかが気になるところです。
乾燥したら屋根にMr.カラーNo.182のつや消しクリアーを吹いて仕上げました。
完成!
鉄道省ワフ2714、完成!

まともに完成させたペーパーキットはこれが初です。勝手が分からず不安ではあったのですが、何とかなるものですね。

3Dと比べてシャープな直線が出るのもペーパーの魅力ですね。
IORI工房の公式っぽく、床下を見せるアングルで。

今回一番こだわった車体の横幅と軌間です。

それにしても小さいですね。MärklinのZゲージと並べてみましたが、幅はともかく高さはあまり変わりません。

似合う機関車が手持ちに居ないので、しばらくは博物館の保存車のようにして遊ぼうと思います。貨物鉄道博物館行きたい!!太子駅行きたい!!
余談:動画で見るこの頃の貨車
友人のY氏に教えてもらった動画です。
そしてラストは倉敷市営鉄道。映画の途中にも出てきますが、車両の社紋で同鉄道と分かりました。駅名は架空になっています。ホームの端を気にしつつ、香川京子を「危ない!」と制止する三船敏郎が演技じゃなくて本気っぽくて好き。
— ツーツラツラ (@tsuratsura75) 2022年7月16日
『黒帯三国志』1956年 谷口千吉監督#映画の鉄道 pic.twitter.com/H6v29dpLBk
映画『黒帯三国志』(1956(昭和31)年 谷口千吉監督)のワンシーンです。上記のシーンは倉敷市交通局の鉄道線(現:水島臨海鉄道)で撮影したもののようです。

線路幅と車体幅を見比べると確かに今作の模型っぽいバランスになっています。前に繋がっている客車よりも細身なのがよく分かります。