3Dプリントのアクリル素材で出したものを塗装する前にやる、サポート材の除去作業の話です。本格的な3Dプリントサービスだとサポートを完全に落とすところまでやって出荷してくれるそうですが、DMMのような簡易的なサービスだとオーブンでサポートを溶かすだけで終わりなので、表面(裏面)に付着しているサポート材は自分で落とす必要があります。
3Dプリントのサポート材は60~70℃程度で溶ける白いワックス状の物質で、常温では水にもシンナーにもアルコールにも溶けないと言われています。それゆえ落とすのが一苦労で、かつ手法は人によってまちまちなのが現状です。
唐突ですが、色々あってサポート材の正体はパラフィンなんじゃなかろうか、と思いました。パラフィンだとすると先述の特徴と矛盾しないんですね。
で、これは既知の事実ですが、パラフィンはリモネンに溶けます。キシレンでも溶かすことができます(というより溶媒としての性能はキシレンのほうが上)が、キシレンは劇物扱いで入手も保管も廃棄も面倒なので考えないことにしましょう。
というわけでリモネンを買いました。am͜a͉zonで売ってるやろ~~と思っていたのですが純度の高いものは意外とないものなんですね。
ちなみに↑これを踏んでも私にいいことは起こりません。
150mlで2000円弱です。決して安くはないですね。リンク先にリモネンは3Dプリントのサポート落としに使える、という売り文句が書いてあるので実は製造側の想定する用途だったりするのです。
で、適当な3Dパーツを漬けこんで常温で1日ほど放置してみました。
透明なものが漬け込んでいないもの(DMMのextreme)、白いのが漬け込んだextreme、黒いのがultraの黒染めです。まず溶けたり変形したりはしていません。しかし、何故か引き揚げてしばらくすると白化しました。ただ、硬さは変わっておらず劣化した感じはありません。
洗剤で洗ってリモネンを落とし、よく水気を切ってから塗装しました。
こちらが黒い部品です。上を向いているのがが出力時の下側だった面です。積層の筋のようなものがハッキリと出ており、サポート材は落ちていそうな感じです。
こちらがextremeで出した部品です。片方は漬け込まずに塗装しました。こちらも出力時の下側を上に向けています。片方は窪みのところのモサっとしたものがなくなっているのが分かりますね。
というわけで、3Dプリントのサポート落としはリモネンを使えば常温で漬け込んでおくだけでできそうです。
この後、とりあえず車体を作ってみようということで設計して出した近鉄260系(内部線・八王子線)のショーティー版です。クリアで出力した造形物をリモネンに漬けると白化しますが、これは模型を作るうえでは非常に都合が良いのです。不透明になると視認性が格段に良くなるんですね。
また、微細な構造を持つ造形物のサポート落としもやってみました。
データ上でφ0.2やt0.15の細い部分が多数ありますが、折れてしまった・ヒビが入ったなどのトラブルは発生していません。リモネンで造形物が劣化することはなさそうです。
今後また何か分かったことがあればここに加筆していくつもりです。
2020/05/11追記:
漬けたことを忘れて2週間ぐらい放置するという愚行をやってしまいました。が、やはり脆化や変形は起こっていませんでした。
もう一つ分かったのは、リモネンから引き揚げても白くてザラザラしているのは、やはりサポート材が落ち切っていないからではなさそうだということです。
左がサポート材落としをしていないもの、右が先述の2週間放置してしまったものです。両方ともサポート材が付いていた所は白っぽいですね。白っぽい部分はザラザラしていて瞬間接着剤がよく染み込むことから、境界層は多孔質のようになっているのかな?と想像しています。