「シーサイドライナーヨコスカ」計画が頓挫してできた車輛です。知名度はかなり低いように思います。
書籍の情報といえば、鉄道ピクトリアルNo.874(2013年4月)に情報が少しだけ文章で書かれている他は見かけたことがありません。
Yahoo!やGoogleの検索で画像が2枚、Twitter検索でさらに2枚見つかりましたが、かなり資料が少ない状態での制作となりました。
やほお&ごおgぇ検索は皆様にお任せするとして、ツイートの方はここに貼っておきます。ツイッターは検索ヒット条件が完全一致なので、過去のツイートを掘り返すのは大変なんですよね…
今月の鉄道ピクトリアル約10年半ぶりの101系特集だったので買った。大井工場のたんぽぽは写真があるのに、大船工場のシーサイドライナーヨコスカは写真が無かった…残念 写真はガキの頃に写ルンですで撮ったシーサイド~の成れの果て #101系 pic.twitter.com/Vcmp9Nno2d
— 保線後ティータイム【ことでん1080形還暦の赤プロジェクトCF実施中】 (@hosengoteatime) 2013年2月22日
https://twitter.com/simakaze485/status/768822347293831169
・塗装の前に
101系の車体と前面を用意。片方はジャンパ栓受けなし、もう片方はありを選びます。前面の原型ライトを削り落とし、GMの101系の板キットについていたブタ鼻ライト(シールドビーム)を取り付け。
・車体の塗装
車体と前面をGMのNo.22「ブルーB」で塗装します。
余談ですがこの色、元々は「小田急の色」と案内されていたので小田急1000形のために購入した物ですが、そうです、今の小田急色ではなく、黄色と青の塗り分けの時代のものでした。だまされた。今回は国鉄車なので何かしらの国鉄色を使ったほうが良かったのでしょうが、手持ちになかったので代用しました。
まずは、実車の写真とにらめっこしながら側面デザインをデフォルメ。
そのデザイン案に沿ってマスキングして、この時点で事業用車に見えたらあなたも私と同じ病気です
妻板とともにGMのNo.21「クリーム10号」で塗装。
さらっと書きましたが、この塗装なのでマスキングが大変に面倒です。
しかもGMの塗料は隠ぺい力が弱いらしく、厚吹きしないと下地の濃い色が消えてくれません。色合いもかなり白っぽく、あまり実感的ではありません。今回の車輌は退色したイメージがあるので良いのですが、通常の車輌ならばFARBEのクリーム10号を使った方が良いでしょう。記事の下部にそちらを使った制作記へのリンクを貼っておきます。
・車体の仕上げ
まずは旧型の車輌で大変な作業、Hゴムや押さえ金具の塗装から。
以前、Bトレの大宮の103系訓練車を作ったときに紹介したポスカを使います。(下部にリンクあり)
隠蔽力も強く、クリームと青の塗り分け線の部分でも下地の色の違いが分かりません。
ちなみにガンダムマーカーですが、インクの乾燥が遅いために余計なところへ流れてしまう可能性が高く、しかも隠蔽力も弱いので全くおすすめ出来ません。
方向幕は透明な両面テープを使って裏から貼り付け。幕はBトレの101系の付属品を使用しました。実車に合わせ、「ズレ幕」も再現。
実車は「試運転」や「回送」など、変わることもあったようです。
使った両面テープはヨドバシで買ったニチバンのTW-18SDですが、「裏紙(はく離紙)がないので簡単に貼れる」…
いや、透明度が大事になってくるこのような用途の場合、非常にやりづらいです。まだ使っていない部分ににゴミやホコリが付いたらアウトなわけで…
最後に、塗装保護用のクリアー塗装。仕上げのトップコートは塗装の修正痕をごまかすくたびれたイメージを再現するためにつや消しを選択。
実は今回、「100円ショップのマスキングテープで模型にマスキング」の試験をしていました。事業用車だけに
不幸にもマスキングがうまくいかず、筆塗りによる修正の嵐となってしまいました。
あれですね、そもそも100円ショップのマステは「模様をきれいに出す」ために、まっすぐ貼れる素材になっています。模型の表面の凹凸に追従するための柔軟性が欠けているので、側灯やHゴムのモールドなどを拾ってくれないんですね…
ちなみに、つや消しクリアーは湿度の高い日に吹いてはいけません。
白っぽくなり、汚くなります。ただし、上手くやればくたびれて退色した塗装の表現には使えるかも…?
・屋根のパイピング
友人より提供頂いた写真です。
— しぶ(鉄道&バス垢) (@shibu_Train_BUS) 2018年10月15日
1986年に横須賀線の末端部での区間運転用に101系2両が試作的に改造されて登場しシーサイドライナーヨコスカの愛称がありました。
結局営業運転する事無く大船工場の入換車として使用されてました。
(連結している3両目以降の車両にも注目です)#101系#2度と撮れない写真 pic.twitter.com/Gla2SIFsT5
架線のない場所まで車輌を押し込めるように、実車が「前パン」仕様に改造されていました。
資料が少ないので断定はできませんが、配管類はおそらく屋根の上を通して妻板から下におろしていたのでしょう。
このような屋根板はBトレの製品に見当たらなかったので、練習も兼ねて初めてのパイピングをしてみることに。
前パン車は、ランボードや避雷器を活かすために中間車のパンタ屋根板を使います。元の配管モールドは削り取っておきます。
当初の予定では、
プラ板から切り出した台座を貼り付け
↓
φ0.2のドリルで台座と屋根板に穴開け
↓
極細の針金を穴に通して輪っかを作る
↓
輪っかに針金を通せば母線のできあがり。
…という計画だったのですが、台座は垂直平行が守られず、貼りつけてから穴を開けると台座が回転力に耐えられず剥がれてしまいました。
剥がれなくても台座に2つの穴を開けるのは難易度が高く、しかも穴あけ開始から少ししたらドリル(φ0.2)が折れてしまいました。1000円近い損失ナリ。
ここで、配管に有用な金属パーツがあるとの情報を得て、トレジャータウン製のTTP215-32「屋上配管止めバリエーション2」なるものを購入。
こちらは、プラ台座の上にシンプルな輪っか状のもの。
台座が失われた箇所は、輪っかの下に台座(?)らしきものが付いたパーツを使用。これもまた高さが2種類あって、かなりマニアック。
これでイケるぞ……とか考えていたのですが、この配管止め、適合する針金はφ0.2mmのものです。母線なのでφ0.3を使おうと考えたのですが、穴に挿さりませんでした。パッケージを見ると、「φ0.4mm程度の配管には別売り215-04や215-31をどうぞ」とあります。母線に使うならそちらのほうが良さそうです。
空気作用管は細い配管が横に2本並ぶので、今度こそ「~バリエーション2」を使ってやろうと考えたのですが、どうやら全ての配管をこの配管止めで固定するのはおかしいようです。開ける穴は一つで済ませたかったので、
某氏に教わった「源氏パイ」で固定。これなら大きめの穴が一つで済みます。
もう少し分かりやすい写真を…
こういうことです。ビジュアル的には絵に描いた芽かな?
これを繰り返します。
固定用の輪っかが用意できたら、まずは空気作用管のほうに…
φ0.2mmの真鍮線を2本用意して挿します。実車をイメージしてパンタグラフの下は曲げてみました。
母線のφ0.3mmも付け終わると、
こんな感じになりました。
上下方向はデコボコ、左右も歪みがありますが、初めてだしまあ多少はね?
パイプをしっかりと固定したら、妻板に下りる部分はは適当に曲げて屋根だけで完結させます。
なお、このままだと妻板の配管モールドとは合いませんが、
実物の101系と103系は空気作用管と母線の左右が逆でした。一方Bトレの妻板は、
左右の話をするならば103系タイプとなります。Bトレでは101系も103系も屋根板と妻板の部品が共通なので、意図的に左右逆にパイピングしてみました。妻板と合わないのはこのためです。
しかし、合っていないのもそれはそれで気持ちが良くないので(オイ、端のほうで曲げて強引に合わせてみました。
・手すりの別パーツ化
屋根板を前後逆で使う都合上、パンタ付近の屋上手すりの表現がなくなります。実車には付いていたようなので別パーツで付けてみました。
使用するのはトレジャータウンのTTP201-12「汎用手すり 1.2mm幅」。ランナー(?)の部分に穴あけ治具が付いてきます。
写真が完成系に飛びますが、最終的にこんな感じに仕上がりました。取付穴はφ0.3mm。大きすぎないか、と思ったのですが裏から接着剤を流すと余計な隙間は埋まるものなんですね。
ちなみに101系と103系、妻板側の昇降ステップも左右逆になっていたようです。そのため例の如く妻板との整合性がとれていません。
また、後パンタ車輌の、側面昇降ステップの上の手すり(何と呼べばいいのでしょう)も浮かせた結果、最終的にこうなりました。
こちらは上記の汎用手すりの「ヒゲ付き」を使用。塗る前はなーんだぁたいしたことないじゃーん状態でしたが、塗装すると目立つようになります。いい雰囲気です。
最後に、カッターとヤスリで屋根板の長さを調整。中間車用は先頭車用に比べて数ミリ長いんですね。本来は一番最初にやるべき作業ですよ?
・屋根の塗装
塗装の前に、油を落とさなくてはなりません。一般的には石鹸水に一晩漬け込むなどの方法が採られることが多いようですが、瞬間接着剤は水に弱いため、この方法は不採用。歯ブラシでゴシゴシもパイピングを痛めそうだったので、洗剤と筆で洗ってみました。毛先の軟らかいものがおすすめです。
金属に塗装するので、まず最初にメタルプライマーを吹いておきます。
その上に、ベンチレーターの色としてMr.カラーのNo.97「灰色9号」を塗装。クレオスさん、通常シリーズでしれっと鉄道カラーを出しているんですね…
色合いはGMカラーよりも実感的ではないかと。
鉄道色としては珍しい「ツヤあり」です。個人的な考えですが、表現の幅が広がるので鉄道カラーは光沢仕様で出してほしいところ。もっとも、業界の流れとしては半ツヤで出すのが常識なのでしょうね…阪急マルーンとか半ツヤで出されても困ると思うのですがどうでしょうグリーンマックスさん???
話が逸れましたね。
ベンチレーターを保護するため、マスキングテープを筒状に巻いて上からマスキングゾルを塗ります。屋根板の色として、GMのNo.35「ダークグレー」を塗装します。
本題はここから。立体化したパイピングの塗装は筆塗りが主流のようですが、某先輩のアイデアを使って
配管の下にテープを潜らせるようにしてマスキングして
あくまでもエアブラシで塗り分けようと。サラッと書きましたが超面倒くさいです。
マスキングが済んだらMr.COLORのNo.35「明灰白色(三菱系)」を塗ります。
塗り終わるとこんな感じ。
布のような質感のなかに直線。ミリタリー系のカッコよさを感じるのは自分だけでしょうか…?
マスキングを剥がすと
ベンチレーターも屋根も保護できていない…あちこちに変な色が付いていました。マスキングって難しい。
ダメな部分は筆塗りで修正します。本式のNゲージならばベンチレーターは別パーツなので、場所によってはBトレのほうが塗装が面倒だったりするのです。
最後に、Mr.カラーのNo.182「スーパークリアーつや消し」で保護塗装。
初めてにしては上出来かな??
パイピングっていいですね。まだまだ「ごはんn杯いける」の次元には到達できていませんが、ライス(小)ぐらいならいけそう。
・組み立て
前パンタの屋根板はジャンパ栓受けのある車輌(クモハ101)に、前後逆に取り付けます。ガラスと屋根板をつなぐピン6本中2本が使えなくなりますが、保持力は十分。むしろ、かなりキツかったので屋根側のパイプの内側をリューターで少々削っておきました。パイピングしたものを力いっぱい押し込むのは怖くて…
下廻りは、適当なBトレ床板に鉄道コレクション第20弾の動力化用台車レリーフを付けたもの。ボックス買いしたので大量に余っていたものです。ぜんぶ動力化したら破産するよねアレ
最後に、戸当たりゴムにコピックモデラー0.02(ウォームグレー)で色入れ。灰色系統のゴムはこれでOK。ガンダムマーカーとは比べ物になりませんよ。
さて、めでたく完成です。
このアングルから見ると…
手すりの間から姿を見せるベンチレーター。
この角度からだと…
立体感のある車端部。魔改造してないほうが部品の合いが悪いのが気に食わない
前面をアップで。
前パンの101系。
こちらはズレ幕を表現。
尾灯はあえてマスキングして透明で残し、後から赤のペンで塗ったのですがちょっと失敗かもしれません。
いずれ、本格的なNゲージのパイピングもしてみたいものです。
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FARBEのクリーム10号とポスカを使ったのはこちらの車両。
改造のために部品を買い漁る際の参考になれば幸いです。
・更新履歴
2017/02/05 投稿