日ノ出前検車区

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【鉄道模型】ツェナーダイオードでM車の起動電圧を上げてみた

電気のプロ(原義)のYさんと運転会でお話をしていた時に、小型モーターを使った動力ユニットは走り出しが早くて常点灯と両立できないんですよね~~と言ったことが全ての始まりでした。

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サンライズのM車

TOMIXのHOのM車に付いている、「実感的なライト点灯や安定した走行性能を確保」するための回路を自作してNにも積んでやろうという試みです。TOMIXはこれを「モーター専用基板」と呼んでいるようです。



目次



使用する電子部品


TOMIXの例の基板の構成部品はブリッジダイオードとツェナーダイオードだとのことです。ツェナーダイオードは定電圧ダイオードの一種で、本来の用途の一定電圧を得るという目的なら三端子型の物のほうが便利なので最近はあまり使われていないとか。

簡単に言うと、ツェナーダイオードをモーターと電源の間に挿入してモーターにかかる電圧を下げてやろうということです。


ここら辺のサイトで軽く勉強したところ、ツェナーダイオードが降伏した後に流れる電流、「ツェナー電流」として流せる電流量は〇〇mAという形ではなく、△△mWと内部抵抗によって消費される電力量(許容損失)で表記されることが分かりました。


念のため調べてみましたが、こことかここに書いてあるように、流せる電流量を増やすために並列につなぐのはNGとのこと。なお、TOMIXの製品では過電流を防ぐためにポリスイッチ(緑色の四角い部品)を入れているそうです。


ここからは自己責任です。ちなみに本家(?)TOMIXのHO模型も基板がちょくちょく壊れるらしいです。なかなか攻めた設計ですね……?現に運転会で見せて頂いたサンライズもポリスイッチが壊れて走りませんでした



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まずはモーターに流れる電流を測定します。軽く調べたところ、秋月電子で手に入るツェナーダイオードで許容損失が最大のものは500mWで、ツェナー電圧が最小の2Vの物の場合でも単純計算で250mAまでしか流せません。


例えばKATOのクモハ12の動力に9V程度をかけて(だいぶ爆走です)流量を測定したところ、LEDの灯火類も含めて100mA程度でした。250mAの半分以下なのでKATOのモーターにこれを使っても安全率2は確保できますね。また、KATOのE233の動力の場合も同様で、他車を牽引する負荷に見立てて指で押しながら測ったら100mA程度でした。これも大丈夫そうです。

ついでに小型の遊星歯車付きモーターの動力ユニットの流量を計測したところ、50mAも行きませんでした。

ただ、KATOの205系のような古い動力ユニットに使うのはやめたほうがよいかも知れません。高速で走らせながら流量を計測したところ、250mAに達しそうな勢いでした。



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許容損失が秋月電子で最大だった先述の2.0V,500mWの物を買ってきました。走り出しの電圧が2Vも上がれば上等でしょう。

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で、ブリッジダイオードと組み合わせてこんなものを作りました。ブリッジの+側にカソードマークがある方を繋げばよいようです。



ブリッジの交流側の端子をパワーパックと線路の間に挿入します。
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結果はご覧の通り!これで動き出す寸前です。元は3V程度だった起動電圧を6V程度に上げることに成功しました。当然ながらどの部品も熱くなってはいません。




小型モーターを使った動力ユニットの起動電圧が低すぎて常点灯ができないことが悩みだったのですが、これで解決ですね。また、定電流ダイオード(CRD)は電圧が低いと流量が安定せず、結果的に灯火類の明るさがスピードによって変わってしまっていたのですが、モーターの起動電圧が上げられればもう少し安定する電圧域で使えますね。

上手くいくことが示されたので、今後M車にはこれを積んでいこうと思います。


実践編

ここからはブリッジダイオード+ツェナーダイオードを各種の動力ユニットに積んでいきます。私の手元で試し次第随時更新していこうと思います。
なお、ここに書いてある電流値などの数字はあくまで私が買った個体のものなので、実践される場合は各々の走行環境での測定を行ってからにしてください。安全率をどの程度見込むか等の問題もありますし、ね。
パワーパックにはKATOのスタンダードSXを用いています。


Zショーティー用動力ユニット

Zショーティーの動力ユニットに付けて落ち着かせてみました。アレはちっちゃい電車でのんびり……という趣旨の製品なはずですが、挙動があまりにピーキーで扱いにくいのです。近鉄260系を作る時にこれを使おうとしたのですが、爆走してしまって風情がなかったので対策してみた次第です。

動画左が9.1V-500mW、右が7.5V-500mWの物です。ちなみに12V-500mWの物を付けたらいくら電圧を上げても動かなくなりました。ツェナーダイオードのスペックシートを見てもその辺りはよく分からないので、各種を数本ずつ買って実際に付けてみるのが一番手っ取り早いと思います。秋葉原秋月電子なら1本単位で売ってくれます。


KATO動力ユニット(最近の20m級)

KATOのE233系6000(横浜線、駅スタンプ付き)の動力ユニットです。
KATOの最近の動力はDCC対応になっているため、電源-モーターの回路に電子部品を挿入するのが非常に簡単です。

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回路の出入口を銅箔テープにしてプラ板の表裏に貼りました。
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これを車体側の集電板とモーター端子の間に挟めばおしまいです。

3.3V-500mWのツェナーダイオードを使用したところ、起動電圧は驚きの8Vに。最高速度も落ちてパワーパックMAXのところでスケールスピード115km/h程度となりました。ちょっと遅いですね。規格上限いっぱいの領域を常用するのも考えモノなのでダイオードを変えることにしました。

2V-500mWの物を付けてみたところ、起動電圧7Vの最高速度133km/hに変わりました。電圧の下降量はもう少し控えめでもいいかもしれません。ただ、ツェナー電圧がこれ以上低いものは手元にないので、今後探して付けてみようと思っています。あるのかな……


GMコアレスモーター動力ユニット

ある意味これが大本命かもしれません。GMコアレス動力は起動電圧が低く、常点灯ができないことで有名だそうです。実際、走り出しの電圧は低いです(手元で測ったら0.3V程度)。
エンドレスを組んで死重としてKATOのT車を6両付けて試運転した結果、乱暴運転をしても40mAも流れなさそうだということが分かりました。結構少ないんですね。

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動力ユニット自体が非常にコンパクトにできているので、部品を積む場所を探すのに苦労しました。

で、結果として、
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回路への割り込みは車体側の集電板をカットする方法で行い、(本当は後戻りできない加工は避けたかったのですが仕方ない)

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2つのダイオードはモーターケースの横に付けました。床下機器で隠せるだろうという魂胆です(笑)

7.5V-500mWの物を付けたところ、起動電圧は6V近くまで上がりました。一方で最高速度が下がり、なんとパワーパックをMAXにしてもスケールスピードで39km/h程度に(笑)さすがに遅すぎますね。

5.1V-500mWの物に変えたところ起動電圧は3V弱となり、GMコアレスで常点灯ができるようになりました。

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右のE233系はKATO製の無改造です

ちなみに、このセッティングだと最高速度は75km/h程度出ます……って、随分のんびりだな?使いどころは限られるかもしれません。

2022/03/04追記:
ツェナー電圧5.1Vのツェナーダイオードを付けたGMコアレス動力に関し、電源をスタンダードSXからスタンダードSに変更したところ、起動電圧が6V程度、最高速度は180km/h程度出るようになりました。電源の違いが顕著に出るようです。現在、もう少し詳細な調査を行っております。



余談

かつてモーターの起動電圧を上げるために適当なセメント抵抗を挿入したことはありましたが、結果は予想通り抵抗が激アツになっておしまいでした。

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左は乾電池2本のスマホ充電器(3V→5V)、右は乾電池1本のLED懐中電灯(1.5V→3V以上?)

別なアプローチとして室内灯の起動電圧を下げるべく昇圧回路を買ったこともあるのですが、電源電圧が12Vにもなる鉄道模型だとどちらもそのままは使えませんでした(トランジスタが激アツになる)。そこで電流の量を絞ろうと定電流ダイオードを挿入したらLEDが全く光らなくなったような記憶があります。抵抗を挿入しちゃ元も子もないですしねぇ。


昔あきらめた夢が実現しました。こんな装置を考えてくれたTOMIXさん、解析して教えて下さったYさんに感謝です。

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