日ノ出前検車区

趣味は朝活で。最近は備忘録と化しています

大宮の103系訓練車を作る(4/4)


東京・大宮総合訓練センターの103系訓練車制作記はこの記事が最終回となります。長かった……
前回の記事はこちら。



・目次




灯火の改造(低運車)

 
元のライトは電球でした。LEDに換装します。

まずは元の状態を…


方向幕がまぶしく光るけど尾灯は暗いあたりに当時のマイクロらしさを感じます。

というわけで、

電球を撤去してCRDとLEDを仕込んでいきます。狭い空間に押し込むならチップCRDが便利。秋月電子などで購入できます、

ここで、ハンダ付けでオススメしたいアイテムのご紹介。

「ひっつき虫」です。ハンダ付けする部品の保持に使います。熱を加えても焦げたり異臭を放ったりせず、繰り返し使用可能。
これさえあれば、基板に対して斜めに部品を立ててハンダ付けするという技も簡単に繰り出せます。位置決めが劇的に楽になるので推していきたいアイテム。



さて、尾灯の回路ですが、CRDの先に赤色と白色のLEDを並列でセットしておきました。ところがこれ、白色側が光らないんですね…
どうやら電気が流れやすいほう(赤は消費電力が少ない)に全部回ってしまったようです。

仕方がないので組み直し。CRDを3つも使用する豪勢な回路になってしまいました。

さて。

やっぱ色分けするとカッコいいですね。

こっちはプリズムの都合でこうなってしまいました。遮光塗装が必要ですね。


さて、プリズムを銀色で塗装してみたところ…


あれ???????


暗くね??????

光がプリズムを通ってくれませんね…


光が透明な物体を通って進むのは全反射によるもの(中学校でやった内容だったっけ)らしいので、塗装したことによって表面が荒れてしまい、反射してくれなくなったのかも知れません。


さて、気を取り直して爪磨きでプリズムを研磨。ここから色々と工夫してみたのですが…


何度やっても方向幕の明るさは揃ってくれません。仕方がないので、ライト基板の加工のやり直し。


尾灯側の方向幕LEDを前照灯側に移動。すると、明るさはほぼ同じに。


前照灯への光漏れを防ぐため、方向幕の導光用プリズムを半分に切って片方は真っ黒に塗装。

また、方向幕の光が下から入ってこないようにボール紙のついたてを設置、プリズムにはアルミテープを貼り込んで遮光。


これで明るさが復活、方向幕の明るさも揃いました。遮光には塗装よりアルミテープですね。

尾灯を点けた際に前照灯が光る問題もかなり改善しました。
 

最後に、ライトユニット全体をフラットブラックで塗装しました。一部だけ元の緑色を残し、乗務員扉から見えるようにしておきました。
 
 


灯火の改造(高運編)

こちらもLED化します。まずは元の状態を…

大改造がここで祟りましたね。光漏れが激しいです。

さて、こちらの方向幕ですが…

一つのプリズムに全てがまとまっています。個別に点灯させるのは面倒なのでこちらの方向幕は不点灯とします。
 
普通にLED化して、

方向幕に光が回らないようにプリズムを切断。根元は黒く塗っておきます。


LEDの取り付け位置が悪かったのか、尾灯が異様に暗かったので…

φ2.0mmの光ファイバーで導光してやりました。
 
 


細部の仕上げ

制作記もラストスパートです。細部に色挿しをしていきます。

ガラスの加工

ドア窓は金属押さえ、戸袋のHゴムは黒でした。購入したモハはグレーHゴム仕様だったので塗り直す必要があります。


…はい、ポスカがあればラクチンです。プラを侵さないので、はみ出しても爪楊枝で修正可能です。


また、前面ガラスのフチも塗ります。金属押さえだったので銀色に。

ちなみにですが、JR東日本タイプの金属押さえはエッチングパーツが出ています。トレジャータウンのTTP235-04で、方向幕、運番表示器、前面ガラス、高運の飾り帯など盛りだくさん。今回は使用しませんでしたが次回は使ってみようかな。


クツズリ


実車の沓摺はステンレス製でした。せめて銀色に塗ってやろうというわけで筆塗りしましたが難しいですねぇ。今作では深追いせず妥協することとしました。
 
 


妻板上部の塗装


はい。色々と書くより見たほうが早いです。妻板の上端は車体色ではなく屋根の色になるべき。どうしてマイクロさんはパーツ分割をこうしてくれちゃったのでしょうねぇ…
 
普通に塗ってもよかったのですが、どうせなら妻板に回り込んだ灰色も再現してみようと。

トレジャータウンのTTP264B「妻板キャンバス押さえ 通勤型国電用」。実車にキャンバス押さえが付いていたわけではありませんが…


マスキングテープの切り出しのガイドとして使いました。
こんな感じで塗りたかったんです。

正直な話、エアブラシ塗装のためにマスキングで残すのは死ぬほど面倒だったのでここは筆塗りで済ませています。


事前にこんなツイートを見ていたので、これを使用してこの箇所で車体の筆塗りを実験的にやってみたのですが、個人的な感想としては「ナシ」ですね…
どうしても色ムラが出てしまい、ツヤ消しクリアーも半ツヤ程度になってしまいます。部分的な色差し程度に留めておいたほうがよさそうです。
 
 

ステッカー

行先表示のステッカーです。訓練用なので旅客は相手にしていないゆえ、本当にフリーダムでした。

今回は武蔵野線系統の幕を選びました。私にとって武蔵野線は非日常の路線なので駅名を見ているだけで楽しいのです ( ◜◡◝ )


購入したのは鳳車輌製造のNo.229「103・201・205系 豊田・京葉 国電用方向幕 武蔵野線/JR篇」。武蔵野線103系に使える幕には世田谷総合車輌センターの製品もありましたが、運番も収録されている点を買ってこちらを選択。


低運の前面は「南越谷」をセット。表記が「南越ヶ谷」だった時代の影響で他とはスタイルが異なっている幕です。詳しくはこの製品の取扱説明書をご覧くださいませ。

鳳車輌のステッカーはそこそこ厚いので、「貼る」というよりは「嵌める」といったイメージになります。


低運車には側面の方向幕もありました。模型ならば左右を同じにする必要はないので……

片方は「むさしのドリーム東京」、


反対側は「新松戸」を選択。


ところで、この製品の側面ガラスは元々裏から白く塗ってありました。ガラスの内側に貼るためには塗料を落とさねばならないのですが、どうしても隅に溜まった分が落ちてくれませんでした。

というわけで、ツメ磨きで裏側をツライチにしてしまいました。ガラスのような面積の大きなパーツでも十分使えます。本当にオススメです。

貼り付けに使用したのはこちらの両面テープ。

ホームセンターで購入しました。両面に保護フィルムがあるのでカットが容易です。


最後に運番ですね。低運転台車にATS-Pを搭載した際、運番表示器は前面窓の内側に追いやられました。この機器を再現したステッカーも収録されていたので、

説明書の指示通りにプラ板に貼って、断面を室内グリーンで塗って取り付け。[99E]なんていう番号を選べるのも事業用の醍醐味。


高運車は…

あ゛、運番……忘れてた……


適当なプラ板に適当なステッカーを貼ったやつでお茶を濁しておきます。今回は都合のよいステッカーが無かったので再現しませんでしたが、実車はずっと運番[05A]を出していたようです。前任の101系訓練車もずっとこの番号でした。

行先は「新秋津」に設定。ここに配置されていた105系の訓練車にちなんで選びました。本当は「ホリデー快速おおみや号大宮」がよかったのですが、一コマのために買うのは……と考えて断念。


ここで、前面方向幕にも側面と同じ「ガラスの裏側」感を与えてやりたかったので、先程切断したライトプリズムを…

爪磨きで磨いて板状に加工。……したのですが、サイズが一回り小さくて使い物になりませんでした。失敗。
 
 


床下の色差し

前面床下のコックに色を入れます。

こんな感じになります。

先程さすがに車体色の塗装には使えないと書いたMr.リターダーですが、ここで威力を発揮しました。普通のシンナーで溶いて塗ると糸を引いたり表面がガサついたりして綺麗に仕上がらないのですが、コレを使えば解決。エナメル以外の塗料も色差しに使えるようになるツールです。お試しあれ。


また、この機器にもスミ入れを施しておきました。
 
 


完成

ようやく完成です。長かった。本当に長かった。

特徴的なズレた尾灯上の手すり、これはモールドにはない表現です。手すりを立体化した甲斐がありました。

続いて撮影タイム。


角度の浅い光を使って、床下機器が見えるように撮ってみました。この車両には夕陽がよく似合いますね。



こう撮ると躍動感が出るかな。
もっとも、実車は数百メートルの区間を行ったり来たりだったわけですが。



撮っていて夕陽撮りの良さを発見してしまいました。

運転室の壁に落ちるワイパーの影。目立たない部分でも作り込んだ甲斐があるというものです。



長い影。


一度でいいから実車を見てみたかったものです。テツ趣味に目覚めるのがもっと早ければ…



自分だけの車両を持つって素晴らしいですね。


後日談


某先輩に勧められたのでワイパーをエッチング製のものに交換してみました。素晴らしいもんです。
モールドのワイパーは、ハンドリューターに模型用綿棒を装着したもの×各種の研磨剤+模型用綿棒で手磨きで綺麗に落とせました。ちなみに、GMのEVOキットはエッチングを想定しているためにワイパーが印刷表現になっているそうですね。


雑誌掲載もして頂きました。2017年の7月頃にRM MODELSで国鉄通勤型の作品を募集していたので投稿してみたところ、およそ10か月後にお返事を頂けました。

RMモデルズのNo.275(2018年7月号)「ラッシュ輸送の立役者 103系」ということで、103系特集のなかの一つとして掲載して頂きました。編集部の皆様、ありがとうございます。
 
 


資料置き場

写真などの資料です。こういう資料は検索しても出てくるとは限りませんので見かけ次第貼っていこうと思います。アップロードしてくださる方に感謝です。



更新履歴
2017/06/23 投稿
2017/12/31 加筆
2022/02/02 各所の修正と加筆
2023/12/31 目次の追加

当ブログはリンクフリーです。