有名な東大宮の103系訓練車の前任です。知名度はかなり低いように感じます。
今回、参考にしたのは
・鉄道ピクトリアルの1990年1月号
・とれいんの1989年12月号
の2冊。
ちなみに、二冊ともこの時期に登場したキロ59「セイシェル」の取材に気合が入っています。模型化する方はぜひ……とか書いていたら作例を発見してしまいました。
RMMの1998年4月号です。参考までに。
・素材を揃える
ベースはKATOの101系を使用。どちらもジャンクで入手したものです。
実車のクモハ100はブタ鼻ライト化されていました。最近のKATOの101系は前灯が別パーツになっていて、別売の11-510「101系 メイクアップパーツセット1」に入っている部品で簡単に改造できるようになっています。
製品の内容や価格はここに掲載されていますが、
シールドビームだけに注目するとなんと4両分で1620円という代物。セットになっている他の部品も使えばよいのですが、自分にとっては高い買い物となってしまいます。
…と考えて迷っていたのですが、ある日、模型店の某々ンデッタを漁っていたら2両分で540円という商品に出会えました。探してみるもんですね。
・動力の改造
2両で走行できるよう、片方には動力を仕込みます。
適当なKATO製動力を用意し、分解して金属ノコでダイキャストを切断し、元の床板も切断して、下側の黒い部分と接ぎます。
動力台車はKATOの「101系関西線6両」から持って来ました。元の101系はフライホイール付きの新動力、旧動力はフラホなしでしたが、足廻りの機構はほぼ変わらず。
台車を固定するプラ部品を加工し、台車の集電板を交換してシャフトを取り替えれば。0.5M先頭車の完成。
床下機器の表現が失われるので、元の床板からディテールを持ってきます。今思えば、ケチらずに101系セットのM車を切ればよかったかもしれません。
・車体の加工
妻板は手すりを立体化、銘板も金属製のものに交換しています。塗装後に別パーツの渡り板を付けるため、貫通扉の下部に下穴を開けてあります。
前面は手すりを立体化しておきました。連結器周りはKATOのダミーを使用しています。そのままでATS-B受電器とコックが再現されている優れもの。片方のみにコックが付いているタイプのコレ、ASSYパーツなどではなく、101系グレードアップパーツでしか販売されていません。103系でもコックが片方にしか付いていない車両が多く存在したため、これだけで分売してほしいものですが……
車端部床下にはATS車上子、列車選別装置の車上子とブレーキ装置の棒も追加しておきました。列選の車上子を吊っておくステーは台車に架装しておきました。ブレーキの棒もステーも、車輪の取り外しによる台車の変形に対応させるべく片持ち式としています。
なお、列選の車上子が実車に残っていたかは定かではありません。実車が習志野所属だった過去があるため、残っていたら面白いな、程度のノリで付けておきました。
・屋根板の加工
パンタグラフはTOMIXの0230のPS16Pに換装。取付の方式が異なるため、KATOのパンタの穴は塞いで台座に穴を開けておきました。また、屋上の手すりも金属パーツで立体化しておきました。
・塗装
・車体
過去に同車のBトレを制作した経験があるため、塗装で悩むことは特にありませんでした。詳しくはこちらの記事に書いてあります。
最初に、車体の内側と妻板に淡緑1号を塗ります。
保護したら外側にメタルプライマーと緑を塗装します。
ここからが本番。Bトレの時と同じく車体をスキャンした画像に
雑誌を見つつペイントでお絵かきしたら、
マスキングテープに写し取ります。
Rが若干違っていたので修正しました。
位置に気を付けて車体に貼ります。
ここまで終わるとこんな感じ。しんどかった分だけ、塗装後の姿が楽しみになります。
ここで、クリームを吹く前に前面に追加で加工をしておきました。
ワイパーです。ワイパーの色が車体色と同じだったため交換の効果は抜群。トレジャータウンのTTP266-01「ワイパー(国鉄汎用)」を使用しました。
前面ガラスのモールドは、ハンドリューター+模型用の綿棒+タミヤコンパウンド3種で落とせました。どうしても若干ばかり凹んでしまいますが、上手くやればさほど目立たないレベルに抑えられます。
この上からクリームを吹いたら…
マステを剥がします。
上手くいっていて一安心。
ちなみに、このクリーム色は完全乾燥すると色合いが変わってくるタイプの塗料でした。塗り上がった直後は白っぽくて違和感の塊だったのですが、数日放っておいたら色が濃くなりました。
続いて、インレタを貼ります。車番に使用したのはレボリューションファクトリーの4276「105系インレタ 黒文字」。仙石線用のインレタです。
…余っていたから使ったまでです。「クモハ100(1)-」まではそのまま転写できるよう、普通に汎用インレタを買ってもよかったのですが、どうせ並び替えるなら余り物でいいや…という発想。ついでに、①と②も入れておきました。このインレタシートに収録されています。ドアコックの逆三角▼はくろまやのNo.7-D「ドアコック標記(上下向)」を使用。他の車両に上下向きを使用する予定があったのでこれを買ったのですが、そういう事情がなければNo.7「呼称順位・ドアコック」などでもいいでしょう。レボの①と②、特に②の印刷精度があんまり良くないんですよね……
保安装置の表記とガラスの「乗務員室」も入れます。それぞれくろまやのNo.11「ATS装置標記」(黒)と171-B「乗務員室標記 ヨコ」(グレー)を使用。上記の仙石線インレタには保安装置標記が[S]しか収録されておらず、[B|S]の表記はいいものが見つからなかったのでくろまやの[B]と[S]の一辺を重ねて表現しました。
この訓練車、ATS-Bに加えてATCとATS-Pの訓練ができる車両なはずなのですが、なぜか実車には[B|S]の表記が入っていました。訓練車仕様に塗り替えた後でわざわざ事実とは異なる表記を入れているのですね。
戸当たりゴムに色を入れます。ポスカで適当に塗って、濡れた綿棒でふき取れば簡単かつ綺麗にグレーの戸当たりゴムが再現できます。
この後、保護塗装をすれば車体は完成です。
・屋根板
塗装の剥離はせずに上から塗ります。メタルプライマーの上にGMのダークグレーを重ねます。
資料を見る限り、クモハ100はクリーム色がガッツリ吹き込んでいてクモハ101の屋根は茶色く汚れているイメージがあったのでそれを再現してみました。
αモデルのベンチレーターとパンタグラフはMr.カラーの「明灰白色(三菱系)」で塗っておきました。資料写真を見て青っぽい灰色に見えたのでこの塗料を選んだ訳ですが、もしかしたら雑誌が古くて退色しているだけかも知れません。
・運転台&ライト周り
せっかくKATOがシースルー運転台にしてくれているので、元の設計を活かして作り込んでやろうと考えました。ちょうどTwitterでいい画像を発見したので、有難く使わせて頂こうとして…
ダメです。全然合いません。まぁ、乗務員室仕切りのドア窓の時点で察しはついていたのですが…
ちなみに、その画像はこちらです。
窓の大きさを適正にすると導光用のライトプリズムと干渉するため、ライトの大改造を行う必要があります。なんてこったい。
幸いにして、元のライト基板の前照灯用LEDが上側に来るようになっていたので、まずこのLEDをハンダゴテで外します。そしてそこにハンダを多めに盛っておきます。
プリズムを保持する部品に燐青銅板をネジ止めし、その先にLEDとCRDの回路を接続すれば、取り外し可能な
前照灯ユニットの完成。
製品状態では爆走させないと光って見えないような代物だったのですが、これでスローでも明るく光ってくれます。
代償として、尾灯と方向幕が同時には光らなくなっています。頑張れば無理な話でもないのですが、面倒なのでやめました。
それにしても、光源を運転台の真上に持ってきても全く乗務員室に光漏れしてこないあたり、メーカー完成品の設計って優秀ですねぇ…
方向幕の部品も、元の設計を最大限活かすようにして制作。半透明樹脂製の方向幕パーツを削って薄くし、自作ステッカーを上から貼ります。
これだけでもいいのですが、さらに一工夫して100円ショップなどで売っているなんちゃってラミネートフィルムをステッカーの上から貼っておきました。これで簡単に「ガラスの裏側感」と反射が得られます。切り出しが面倒ですが頑張る価値アリ。今回の作品では3枚重ねにしてあります。
存在が確認されている[新大宮]と[朝日]の他に、実際の訓練線にあわせて[青葉]と[山彦]も作りました。
ちなみに、右はインクジェットプリンターで、左はレーザープリンターで印刷したもの。元は同じ画像なのですが、細すぎる線は無理に印刷しないレーザーと線を太くしてでも全部印刷するインクジェットの差が現れています。場合に応じて使い分けることが大事ですね。
・床下車端部
先述のダミーカプラーに加え、さらにディテールを追加します。
制作中に新しい資料が見つかったため、クモハ101のATS車上子を交換。銀河モデルのN-195「ATS-P型車上子 新系列電車用」に細工してそれらしくしました。ケーブルも生やしてあります。
乗務員ステップはトレジャータウンのTTP262-01「ATS-B型車上子(胴受設置)・101・103系前面手すり」を使用。ステップは実車にも長短があるようですが、この製品の短いタイプを使いました。国電の乗務員ステップはTTP219「乗務員ステップバリエーション」など他の製品にも収録されているのでそちらでもいいでしょう。
実車になぜかステップが付いていない乗務員扉があったため、その部分には実物同様クレーンフックとハンドスコッチを付けておきました。クレーンフックは実車通り2両で合わせて8個付けてもいいのですが、コックと被ると目立たないのでやめておきました。
・床下機器
床下機器(遮断器?)がクリーム色になっていたので塗っておきます。
T車は簡単でした。DCC対応で床下の一部が外れるようになっているため、ここを外して塗ってしまえば良いのです。
・仮完成
ここまで終えて某イベントの日を迎えたため、仮完成状態で展示しました。
拙作の103系共々、非常に有名なモデラーさんの209系訓練車(現行機種)と並べさせて頂きました。ありがとうございます。
あくまで仮完成なのでこれからも加工は続きます。せっかく乗務員室仕切りを頑張ったんだから運転台も作り込んでやりたいところ。あと前照灯の光漏れも直さなきゃ。
それと、某所の書庫を漁っていたら新たな資料が発見されました。
鉄道ジャーナルの1993年5月号(No.319)です。訓練の様子を取材した記事に色々な角度からの写真がありました。新事実も発覚したので追加工作が必要になりました。
・更新履歴
2018/10/19 仮完成まで投稿
2018/12/14 追記