ワールド工芸がプラスティック製車体のイージーキットを合言葉に製品化している「プラシリーズ」の一つ。発売を知った瞬間に(後先考えずに)購入を決意。その後積み上げるのも気が引けたので、初めてのプラ製板キットとしてこれを選んでみました。
実車資料は、インターネット及び鉄道ピクトリアルのNo.866「事業用車両」(2012年9月)と、「国鉄電車ガイドブック 旧性能電車編(下)」。国鉄電車ガイドブックはこの車輌の図面が掲載されています。
・前面
本来の設計では、片方は配管なし前面、もう片方は配管あり前面を使用する想定なのですが、その前面パーツの配管モールドがあまりにも大雑把なので金属線で引き直すことに。削るのは面倒なので両側共に配管なしの前面を使用します。
配管なしの前面もこんな感じ。サボ受けがかなりゴツく、尾灯のフチも相当に太いです。サボに関してはおそらく実車の箱のサイズ感をそのまま金型に反映させたのでしょうが、そのせいで逆に安っぽくなった感があります。ちなみにTOMIXの72/73系だと、サボが差されている状態を表現した部品が付いてくるようです。KATOのクモハ12などはこの大型サボ受けが華麗に表現されているのですが、この辺りが完成品メーカーの技なのでしょうね。
大型で目立つので、実際にサボを差し替えて遊べる金属パーツに交換。また、尾灯も金属パーツに置き換えます。
サボ受けと尾灯を削って、
トレジャータウンのTTP241-02「前面箱サボ受け#2」を用意。
一つ分を切り出すとこんな感じ。これを組み立てるとサボ受けになります。
尾灯の交換にはBONAのP-206「旧型国電用テールライト(平妻用)【4組入・φ1.1】」を使用。
ただこの部品、取り付け穴の直径が何故か1.1mmと中途半端な数字で、1.0mmの穴にはギリギリ入りませんでした。根元側はそこそこ厚いので、あと少し削って1.0mmで取り付けできる仕様なら多くの人にとって使いやすいのにな…と思ったり。
取り付けて箱組みするとこんな感じになります。
さらっと流しましたがこのキット、箱組み前後の処理が大変です。屋根板が長すぎるので切り詰めたり、前面に飛び出る謎の突起を削ったり…
・台車
元のキットにも台車レリーフが付属していたのですが、ご覧のようにクオリティの程は…(´・ω・`)
板バネの横にハシゴのように見える物(なんだろうこれは)が付いている台車で、分類的にはDT11となり、実車資料を見る限り使うのはこのタイプの台車で正しいようです。ただ、GMのDT11は仕様が違うので使用不可。他のメーカーの部品を漁ると…
KATOの4964D1「クモハ12鶴見線動力台車DT11」がバッチリ!!
…って動力台車かよ。
さすがに高価な動力台車を切ってレリーフだけを持ってくるほどお金持ちではないので、他をあたります。
- 鉄コレにこの仕様の台車を履いていた車輌がある…?
- 鉄コレのTD-02「動力ユニット専用台車枠パーツセット」に収録されている
- 動力ユニットTM-07(TM-07R)に収録されている
ことが判明。鉄コレの台車が使えそうです。
…さて、模型屋を漁っていたらこんな物に遭遇。
鉄コレ2両で432円。安い。
クリームと赤の車両、豊橋鉄道ク2751の台車がお目当てです。もう片方は秩父鉄道のデハ302ですね。
んでこの台車がお目当て。キットに付属していたものよりも表現が格段に上です。
・有蓋室の床
素組みだと有蓋室に床がない状態となるので、プラ板で加工してやります。側面と前面合うように切り出し。
無蓋室の床板も含めて車体を構成する構造なので、通常の箱のように「塗ってから床板を付ける」ことはできません。また、有蓋室の6面全てにフタをすると、有蓋室内に色を塗ることができなくなります。
有蓋室の床は別で作っておき、サイズを合わせて連結器その他の加工を行って塗装後に付ける方針でいきます。
サイズを合わせたら取り外し。これは別で加工して、最後に取り付けます。
・パイピング
前面から降りるパイピングは旧国ならではの魅力。
前述の通り、モールドが大雑把で恰好がよくないので自分で引き直します。
・母線
ここで洋白製の金属パイプを用意。Albion Alloysの、外径0.4mm、内径0.2mmという驚異的な細さの金属パイプです。わざわざパイプを使う理由は後述。
買ってきたままだと長いので当然切断しますが、普通に切ると潰れてしまいそうなので…
予めφ0.2mmの金属線を挿しておいた状態で、カッターを使って切断。
前面に固定する金具として、トレジャータウンのTTP215-31「屋上配管止め バリエーション1」を使用。実車の固定具もひげ付きだったのでピッタリ。
母線はランボードの下を通ってパンタグラフに接続されていた様子。TOMIXの製品状態そのままだと屋根板のRに合わないので少々ばかり削り、ランボードの足に穴を開けて母線を挿します。
パイプを曲げて配管止めに通し、ランボードと接続。かなりいい感じです。
・空気作用管
こちらはφ0.2mmの真鍮線で作ります。
まず、資料がなさすぎて困ります。前面を伝って屋根に上がっていくのはいいのですが、その後が、ね…
元のモールドはこのようになっています。そのままなぞってもいいのですが、やはり何かしらの資料は欲しいもの。
…ですが、改造前の姿まで遡って探しても見つからず、また類似した車輌から類推することもできず(あの時代に、屋根上を撮影するためにフィルムを消費する人はいなかったのでしょう)、結局あきらめることに。
雰囲気重視で作ります。
屋上にトレジャータウンの配管止めを設置、真鍮線を曲げて前面に下ろしたら源氏パイ止めで固定します。
(源氏パイについて、詳しくはBトレにパイピングしてみた記事に書いてあります)
実は、最初は前面に0.1mmのプラ板で土台を作っていたのですが、いざ出来上がってみたら微妙だったので撤去しました。
・ちょっと手直し
ランボード周りを角度を変えて見ると……えーと?
ランボードの足を入れるべくもとのキットに開いていた穴ですが、どうやら大きすぎるようです。隙間ができてしまっています。これは放っておけません。
適当なランナーを焼き伸ばして、(ちなみに今回はBトレのガラスのランナーを使いました、本当に何でもいいんですよ)
行くところまで挿して、
カットしてヤスリがけ。これで簡単に丸穴が塞げます。
ちなみにこの穴の径が気になって調べてみたところ、どこかで聞いたようなφ1.1mmでした。業界内に何かがあるのでしょうか…?
ふと思い立ってパンタの足を挿す穴にランボードを入れてみると、これが見事にピッタリ。全部同じ径で開けてくれればよかったのに。
あとは穴の開け直し。パンタ足の穴の径がφ0.8mmだったので、こちらもφ0.8mmで行きます。
仕上がりはこんな感じ。穴の周囲の灰色の部分が余計だったわけです。
・銘板
トレジャータウンの「京成赤電小パーツ集」を使用。あるメーカーは銘板ばかりを集めた商品を出しているのですが、どこへ行っても売り切れ状態。そんななか…
こんな情報をキャッチ、すぐさま購入。
うまいこと買わされた。
接着方法ですが、説明を読むと
プラ用接着剤を流し込み、塗膜で固着
とあります。えっ…?本当に大丈夫かそれで…?
強度が大変に心配だったので、瞬間接着剤で固定します。
下穴を開け、銘板を置いたら裏から接着剤を流して固定。ウマくいったぜとか思っていたのですが…
瞬間接着剤が銘板の裏全体に流れてしまい、接着剤の厚みで接着面が揃わなくなってしまいました。仮止めが甘かったか。
・車端床下
KATOのクモヤ90を購入して以来、単行事業用車は片側TN、反対はKATOと決めています。今回もそれに準じて工作。
・TN側
ちょうどJC6329「密連型TNカプラー(SP・黒・旧型国電用)(1個入)」という、TOMIXの72・73系用のカプラーがあったので購入。IMONの中の人いわくJC28のスプリング変更版だとか。
それにしても、どうして新品のTNカプラーはいつも粉まみれなんでしょう?
きちんと洗って、
定番のTNカプラーJC0336と何が違うのかと思い比べてみると…
連結する部分が違うんですね。
旧国の写真を見ると確かにそこの形状が現代のものとは異なっています。
そして、当然この車輌はスカート無しなので床下ディテールも再現します。
・胴受の改造
使用したTNカプラーは厳密に言うとこの車種のためのものではないので、細部が異なっています。
実車の胴受はこのような形状ではありません。ジャンパ栓受けの個数も、両側に1つずつではなく、片側が1つの反対側は2つ。特に、写真右側に関してはジャンパケーブルとの兼ね合いもあり、個数と位置が実車と異なっているのは問題。
そこで、
この部分を改造します。
KATOのZ04-7576「クモニ13飯田線 胴受け」を使用。TNカプラーの胴受けとジャンパ栓受けを切り落とし、これに交換します。
KATOの胴受けは、ランナーから外すとこんな感じ。カプラーに取り付けるツメは切り落とします。
旧性能電車らしさが出ていい感じです。見た目への影響が大きい部分なのでTOMIXにもぜひ頑張って頂きたいのですが、金型流用の関係で難しいのでしょうね…
ちなみにですが、どこかのメーカーがエッチング製の胴受けパーツを出していました。薄いのでそちらを利用するほうが楽かも。
・母線の後始末
前面を通して下げた母線は床下に引き込みます。
実車のように曲げて(乗務員ステップと干渉するので若干異なりますがね)
床下ディテールを差して、
連結器と台車を付けると…
台車が回らない。
…はい。模型の悲しい性ですね。
ここで気になって調べてみたところ、一般的なレンタルレイアウトの最小カーブ半径は280mm(路面、山岳など特殊な路線を除く)のようです。この程度は曲がれるようにしておきたいもの。
…というわけで、
曲げて、
ギリギリ乗務員ステップを避けるようにしておきます。
これがTOMIXのC280を曲がっている時の台車のおおよその回転角度。本当にギリギリ。
というわけでここまで来ました。先は長い…