かなり有名な事業用車で、改造元が103系ということもあって「鉄板のモデリングネタ」となっています。
実車は、モハ102-224にクハ103-322の前面を取り付けた車輌とクモハ103-100でユニットを組んでいました。形態的には非常に珍しい「非ユニット窓の高運転台車」が含まれるため切り接ぎ工作は必須。2両で完結するお手軽さ(お手軽とは言ってない)を買って挑戦しました。
・素材を用意する
今回はジャンクの103系を購入しました。共にマイクロエース製の、
モハ102-272と、
クモハ103-66でした。(顔しか撮ってませんでした)
モハはA-0554「103系 武蔵野線・オレンジ[改良品]8両セット」に、クモハはA0446「国鉄103系 中央線・オレンジ・冷改車 基本7両セット」に入っていたものだったそう。
顔だけ持って行かれるのはこちら。
KATO製で、妻面と側面の間に酷いヒビが入っていて使い物にならないジャンク。ブッ○オフで捨て値で売っていました。
運転台の後ろには点検蓋のようなものが付いていますが、これはどうやら飛び出しているタイプとツライチなタイプの2種類があったようです。今回制作する訓練車の写真を見る限りツライチなタイプが正解のようですが、今回は省略します。
・前面の切り接ぎ
高運転台車は、実車がモハに運転台を取り付けた物でした。模型でもその加工を行う必要があります。
KATOの高運転台車を乗降扉の前で切断します。こちらは簡単。
懐かしの関スイの所属表記。
こうやってまじまじと見ると分かりますが、車体の側面に対して前面がズレています。金型を合わせる位置が悪かったのでしょうか。
一方、中間車のカット位置ですが…
フタ屋根を開けると車体がこんな感じになっています。天井に穴が開いているほうを切り落としたくなりますがなんで開いているんでしょうね、ここで側面のルーバーの配置が重要になってきます。
実車の資料を見ると、反対側で切るのが正解となることが分かります。
ある程度長さを揃えたらIPAへ投入。マイクロ車はすぐに落ちてくれましたが、厄介なのはKATO車。なかなか落ちてくれません。
漬けすぎてもプラが傷みそうなので途中で妥協しました。
塗装を落としたら、断面のすり合わせを行います。
車体の長さは屋根板に合わせて調整。
車体の裏側を多く削るようにするのがポイント。車体はタミヤセメントで接着しました。流し込みタイプの緑キャップをメインで使用。
車体幅が異なっていたので若干ばかり強引。両社の雨樋の表現の強さの違いが際立ってしまいますね…
あとは接いだ表面の処理。塗装すると一気に悪目立ちする可能性があるので少々怖いです。Bトレの209系の屋根板を接いだときみたいに…
タイラーなどをフル活用しつつ処理しますが、どうも気になったので雨樋はプラ板で追加しました。
t0.1のプラペーパーを、毎度お馴染み細切りテンプレートで幅0.4mmに切り出し。これをタミヤセメント(緑キャップ)で接着し、ヤスリで整えれば雨樋が整います。
ちなみに、継ぎ目の黒い「何か」は「黒い瞬間接着剤」です。微妙な隙間埋めに便利なのでお試しあれ。
修正が済んだらMr.カラーのサーフェーサーを吹き付け。審判の時です。
容赦なく実情が浮き彫りになりますね。まだマシなほうか…?
あとは修正を加えれば、最低限の加工は終わりです。接いだ部分は強度が低いので裏から瞬間接着剤を盛っておきます。
・屋根板
まず、一番前に来るインバータとランボードを撤去。
カッターである程度サクサク削ったらヤスリがけ。ここでもタイラーが活躍。
変な角度からですが、途中経過。話が前後しますが、高運転台側のジャンパ栓の受けは撤去しておきます。付いたままになっている作例が多くて気になるもの。以前Bトレで試作品を作ったときに、実車には無いことに気付きました。
穴はランナー焼き伸ばし棒で埋めます。
ここまでが終わるとこんな感じ。不揃いに感じるクーラーの向きですが、実車と比較したらこれで正解でした。クーラーの向きを記録するために撮影…
とか思っていましたが、取付穴の大きさを変えることで付ける向きを間違えないようにする工夫がなされていました。
ここで屋根板をIPAに投入。タッパーを少し日向に置いておいたらあっさりと落ちてくれました。
さて。クーラーの下に付いている台座のような四角い何かですが、これは実車には付いていました。相方の低運転台車にも付いていたのですが、購入した模型には表現されていません。武蔵野線の103系の写真を眺めていたら台座がない子を発見したので、おそらくはプロトタイプの違いでしょう。
作るのめんどくせぇと思っていたらボナファイデのこんな製品を発見。
P-137「AU712 クーラー台座 精密切削パーツ 103系用:2輌分入」。
プラ板を貼り付けて削る作業も検討しましたが、時間がかかりそう&美しくキメるのは困難そうなのでやめました。お値段は案外安い定価450円+税。時間を買うお買いものです。時給1000円換算だと…と考えると、コスパは抜群。
この手の曲面が絡む商品は大抵「トミー用」「GM用」などと対応メーカーが指定されているのですが、この商品にはそのような但し書きがありませんでした。103系のような超定番車種、それも設計図がオープンになっている国鉄車だと、現代の水準ならどこが作っても同じになるのでしょうか。実際、先ほど載せた写真ではKATOの前面にマイクロの屋根板を合わせているのですが、曲線のズレは無視できる程度でした。
マイクロの製品はクーラーの下に台座が潜り込む本当の「台座」ですが、この製品を使うと「台座モドキ」となります。クーラーの取付足と干渉させない配慮でしょうか?
ここまでが終わるとこんな感じ。インバーターを撤去した屋根板はヤスリで丁寧に均して、サーフェーサーを吹いて傷を隠しておきました。
・動力
購入したのは2両ともT車。片方をM車に仕立てて自走式にしようと考えました。
低運転台車は特に切り接ぎをする必要がありません。従って、床板は基本的に無加工で済むため、こちらを改造するのは得策ではありません。
動力化するのは高運転台のほうとなります。
ただし、動力ユニットをそのままはめる訳ではありません。ライト類は点灯する仕様にしたいので、床板の前半分はKATO製を使い、いわゆる0.5M仕様とします。
・動力ユニット
・動力の選定
これがKATOの床板の前半分。後ろにKATOの103系用の動力ユニットを切って付けるつもりだったのですが、台車の表現が全く別物なんですね。完成後も違和感を放ってしまいそうです。
KATOの動力台車は構造上レリーフの差し替えができないので不採用としました。
代わりに出てくるのがTOMIXのE501系の動力。
車軸のうち、車輪の内側部分に集電板を押し当てて集電する方式となっています。
言葉では伝わりにくいと思うので、レリーフを切った(後、断面にプラ板を貼った)姿を。写真では集電板が外してありますが、ご覧のように車軸が車輪の外側に飛び出していません。つまり、台車レリーフは機能に関係がないんですね。
・動力の改造
というわけでマイクロのトレーラー台車も解体して、
融合。これで「マイクロ風TOMIX動力台車」ができるわけです。
ギアボックス(?)の部分も改造。ボディマウントカプラーを取り付けるため、カプラーポケットを落としておきます。
ダイキャスト部分は、モーターの使わない側のシャフトがギリギリ収まる程度のところで切ります。ゴツい金属を切る作業となるため、金鋸が必要です。
・床板の融合
高運転台車の床板の前半分は、先述の通りライトユニットの関係でKATO製を使用。
ガラスと床板が干渉する部分は全て切り落としておきます。
こんな感じで車体にはめて、前後のすり合わせをしたら床板の黒い部分のみを接着剤で固定。
こうなります。強度が大事になってくる部分なので、一晩程度は放置するのが無難かも。
動力ユニットの集電板を切って曲げて加工し、
ライト部分に合わせます。
ライトユニットの下にくる部分はKATOの集電板を使用。ハンダで繋ぎます。
微調整を繰り返せば完成。これで、ライトと動力の両立が可能となります。
・車体と床板の固定
動力を改造すると一番悩ましいのが車体と床板の固定。接着剤などで固定するとメンテナンスが困難です。車体と床板のメーカーがバラバラなため、ツメは使えません。
前面と床板の前半分はKATO製で共通なため、前部はライトユニットで固定できます。問題は後部。
…TOMIX純正のライトユニットを止めるツメを活用しようかとも考えたりしましたが、あれこれ考えた末にボツ。
結局、磁石で固定するという方法に落ち着きました。
使用したのはハイキューパーツのネオジム磁石の1mm×4mm×1mmのもの。
「ネオジム磁石の中でも、磁力の強いグレードN52です」の言葉通り、こんなに小さい磁石同士でも十分に重いダイキャストとモーターを保持してくれます。ここまで便利で、お値段は10個で250円程度。この他にもサイズや形状にバリエーションがあります。
ハイキューパーツは鉄道とはあまり縁のないジャンル向けの部品を扱っているブランドですが、他のジャンルの商品も上手く使えば効果抜群。たまに他ジャンルのコーナーを覗いてみるのもいい刺激になりますよ。
・更新履歴
2017/05/30 リンクの追加
2017/06/23 加筆
2019/01/18 写真の追加